2004/11/13

超重元素合成その後


11月8日のブログ「超重元素合成」の記事の中で幾つかの「知りたい点」(以下)を書いた。

・元素合成を行う理由。
・行う事によるメリット
・結果的にでる利権の問題
まだ途中で中身は薄いが少し書きたいと思う。

ちなみに理研ニュース11月号に113番元素発見の詳細が掲載されている。

この件で図書館から元素の本を借りて読んだが、意外に面白かった。読んだ本は朝倉書店出版の「元素の辞典」で1994年初版だった。辞典なので各元 素毎に性質だとか用途だとかが詳しく載っている。同じ出版元から出している書籍に「「元素発見の歴史1?3」があるが、それは図書館には置いてなかった。 ただ、この辞典にも多少は歴史が書いてあったのでそれなりには知ることができた。

・「元素合成を行う理由」について
超重元素と呼ばれる、93番のネプツニウムより原子番号が大きい元素(重たい元素)は、、不安定ですぐに別の元素に崩壊してしまうので、自然界には存在しない。つまり人工的に合成するしか発見はできない。

なぜ人工的に作られるのに発見と呼ばれているのかは、これは僕の想像だが、「自然界に存在しない」と言う事は「自然界に一度も生成されたことがない」とは違うと思う。例えば、恒星の爆発、星系同士の衝突等で瞬間的に生成される可能性もあるのではと思う。

「周期表」に対する貢献
「周期表」は人類にとって大いなる知識だと思う。今までの元素発見には、多くの人が力を注いできている。それに少しでも貢献したい科学者の気持ちがあるように思える。

元素の存在限界を知る事への過程
「周期表」は宇宙の素材表だと僕は素人ながら捉えている。元素の存在限界はどこにあるのかを知ることは、逆にいえば宇宙の事を知る手がかりに繋がるのではと思う。

安定した島の発見
現代物理学の理論では重たい元素の中には、安定な特定の島(元素)が存在しうるとなっていて、それに相当する元素は近所の元素より不安定ではないらしい。 より安定する超重元素が発見されれば、その元素の性質を含め調査が可能になるかもしれない。そしてその元素が新たな物質として未来に利用される可能性 (夢)も出てくる。ただし、その元素は番号からみると114、120台、160台とか・・・

今回発見された元素の利用
今回発見された113番目の元素は非常に不安定な為、その元素の性質の調査は現状では殆ど難しい。観察のレベルとなるので、実質的には研究用のみの利用(次の元素の発見)となるのだと思う。

僕にとって、元素合成を行う理由は、人の特徴だからとしか言いようがない気がする。未知なる物を追い求める内なる欲求。それが一番大きいのかもしれない。

・「元素合成するメリット」
周期表に日本から命名された元素が載ることは大きい。なぜなら周期表は、都度書き直されながらも、人間の営みの中で残され続けるものであるからだ。これに名前が載る事だけでも、素直に理研の研究者に拍手を送りたいと思う。

現代では元素合成を行うにはそれなりの複雑で高価な装置の開発が必要になる。その装置の開発からの応用技術が商業に転用されるかもしれない。

理化学研究所は文部科学省の所管の独立行政法人なので民間の研究所よりはメリットおよび利権などを意識して研究を行わなくてよい環境にあると思う。だから、僕の最後の知りたいこと「利権」については愚問だったのかもしれない。

・今回気になった点
「元素の辞典」では99番元素と100番元素の発見エピソードは以下のように書かれている。
「初の熱核兵器Mike実験は、1952年11月1日エニウエトック環礁で行われた。Mikeは爆弾と言うよりその一歩手前の爆発装置というもので(以下略)」
この実験で99番元素と100番元素が発見されるのだが・・・

この話は世界で最初の水爆実験の話だと思う。なんという無邪気な表現なんだろうと思ってしまった。これらエニウエトック環礁とビキニ環礁などの相次 ぐアメリカの水爆実験と、原爆実験により島が地球上から亡くなり、日本には死の灰の雨が降り注ぎ、日本の漁船は被爆もしている。当然にその地域の生態系も 大きく変わったことだろう。勿論、科学者達は東西冷戦の中の核開発競争に便乗したに過ぎないが、科学者としてもう少し幅広い視点を持ち合わせて欲しいと 思った。例えば、晩年のアインシュタインの様に。

しかも、この水爆実験で発見された99番元素の名前はアインシュタインから取られた名前とは皮肉が効きすぎている。

画像は「周期表」、「周期表」は元素の周期律がわかりやすいように配列された表である。さまざまな周期表があるが、長周期型周期表が現在もっとも広く利用されている。

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