2004/12/21

周波数割り当て問題からみる携帯ビジネスの今度

今現在携帯電話の周波数割り当て問題でNTTドコモ、au、ボーダフォン、ソフトバンク、イーアクセスで熱い戦いが繰り広げられている。新聞紙上でも時折取り上げているので興味を持ってみている方もいるかもしれないが、大方の人達には興味のない話だと思う。それは、この議論によって携帯サービスの何が変わるのかが浮かび上がってこないからだと思う。周波数は国民の資産であるはずだが・・・
携帯事業者の熱き戦いは、総務省が情報通信審議会からの答申を受けて、無線周波数割り当てを抜本的に見直す方針を打ち立てたのがそもそもの発端だった。

忘れていけないのは、情報通信審議会の答申の中身だと思う。ユビキタス社会実現や、セキュリティの確保、無線LAN産業育成といった提言が盛り込まれている答申に対し、総務省は周波数の再編成でそれに応えようとしている。それは論理的に正しいと思う。何故なら、ユビキタス技術は無線を使う技術でもあるからだ。

それが蓋を開けたら、ユビキタス社会への実現どころではなく、企業のそれぞれの思惑から議論が泥沼化している。もっとも、それぞれの企業の立場から言うことはもっともな話も多いのは事実だ。だが門外漢の僕からこの問題を見れば、明らかに言えることは既存携帯事業者達(以下、既存各社)が、ソフトバンク孫正義氏の携帯事業参入をやめさせる、もしくは遅らせる心理が働いているのは事実のように思えて致し方ない。実はこの視点で、本記事は書いている。

なぜ既存各社は孫正義氏を恐れるのであろうか。それはADSL事業で彼に負けたことと無縁ではないと思う。逆に言えば、既存各社はADSLで負けた理由を押さえていないことに繋がるのかもしれない。もしくは押さえていたにしても、それに対し同等の資源配分が出来ない環境にあるのかもしれない。僕はどちらかというと後者の様に思っている。

孫正義氏が考える携帯事業の展開は、携帯のIP化であり、それによるYahooBBとの親密な連携であり、さらに携帯に無線LAN機能とユビキタス技術を加えることによる、ユビキタス社会で携帯を中心的な端末にすることでもある。これは僕の想像だが、孫正義氏にとって携帯事業での利益確保は、現行の携帯ビジネスモデルによってではないと思う。
ユビキタス社会での新たな携帯端末におけるビジネスチャンスに備えての参入であると思っている。

携帯のIP化は当然に通話料を含む利用料の破壊に繋がるであろう。また近いうちに始まる番号ポータビリティに対する対応も考えなければならない。既存各社は、孫正義氏が参入することで、価格破壊を含めそれらの変化が早まるのを恐れているのだと思う。つまりは、変化に対応する戦略を持って無く、持っていないことで当然に資源配分も出来ないに繋がってくる。

孫正義氏の参入を遅らせる時期として、既存各社が要望する時期は、周波数再構成が落ち着く2012年であり、番号ポータビリティ施行後でもある。これも推測ではあるが、既存各社達は、番号ポータビリティによる大きな変化は施行後の1回のみであると考えているのではないだろうか。そう思うのは、固定電話の変化と言われたマイラインの経験則がそこにあるのは事実である。確かに現行の携帯ビジネスをみれば、そう思ったとしても不思議ではない。幾ばくかの人は施行後も携帯各社を乗り換える事を行うとは思うが、それは既存各社の存続に影響を与える話ではないのだろう。

ただ、問題は同じ時期に来るであろう、新たなユビキタス関連のサービスとそれに伴う携帯端末の位置づけの変化が無いことが前提であると言う事だ。携帯端末は、その発生当時から見ると大きく位置づけが変わってきている。当初は屋外で通話が出来る(固定)電話の位置づけだったのが、今ではメールを含むネット端末への位置づけ、さらにはゲーム、音楽、ラジオ、テレビ等の退屈を紛らわすための道具に変わりつつある。これらの位置づけは、携帯端末の継続的な機能追加の一環であるので、既存各社の戦略は大きく変える必要はない。

でもユビキタス関連のサービスによっては、携帯の位置づけが変わり、その事から既存のビジネスモデルではビジネスが成り立たなくなる可能性も十分にあると思う。
そしてそうなった場合、現行の既存各社ではそれを乗り越える事は難しいのではないかと思ってもいる。

僕はあえて既存各社に提案したい。それは、今までの仕方を180度変えるやり方でもある。つまり、孫正義氏を受け入れる方向で検討するのだ。例えば、新規参入する場合、米国などで既存各社への設備保証金を支払うことが通例であれば、それを条件とするのも良い。もしくは既得権より既存顧客へのサービスを保証する事から割り当て量の残りを提示するのも良い。つまりは、孫正義氏が参入する為の条件を逆に提示する方向の議論を行う様にするのである。そうなると孫正義氏にとっては、それを受け入れるか入れないかの判断になり、問題はあくまで孫正義氏側となる。

それと同時に、既存各社は携帯事業に対して積極的に変化を模索し、新たなサービス構築とビジネスモデルの開発に力を注ぐのである。価格破壊を孫正義氏以前に既存各社が行うのもよいのかもしれない。
そして検討し創出した新たなサービスイメージを多くの人に伝えるのである。

これらは難しいことは十分にわかる。でもそれを行わない限り既存各社の明日はないのでなかろうか。

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