2005/01/22

ビジネスにおける「能力」を考える

会社で良く聞く言葉に「能力」と言う言葉がある。例えば、特定の人をさして、「あいつは能力があるから」と言う感じで使われる。この場合、「能力」があると言うことは「優秀」と同義となっていて、優れている人に対し使う場合が多い。では会社で言う所の「能力」とは一体何を指すのだろう。

以前に部署にいる人の教育計画を検討したことがある。部署には会社から委託されている機能があり、その機能を満足するために必要なスキルを洗い出し、それをランク付けした上で、それぞれに該当する外部教育機関のカリキュラムを探した。参考にしたのは産業経済省が策定した「ITSS」だった。

その際に思わぬ抵抗があった。つまり外部教育機関で教育を受けたとしても、それは無駄との意見が思いの外強かったのだ。それらの意見を強く言う人の趣旨は、経験が重要、短期間の外部教育で真にスキルが上がるとは思えない、備わっているセンスがあるかないかが大事、教育はOJTで十分、と言う物だった。

それはそれで正しいと思う。人はそれぞれ持っている資質は違うし、経験は大事だ、それに短期教育で誰もスキルが身に付いたとは考えないだろう。OJTについては、その仕方によっては確かに有効だと思う。全て彼らが言うことは正しい。正しいが、それを正しくするとすれば、部署内にきちんとしたポリシーがあればの話だ。

まず、人それぞれが持っている資質を高める事は、どうやれば出来るだろう。全ての資質を完璧に満足する人は間違いなくいない。例えば、指導力があるけど実行力が乏しい人もいるかもしれない。次ぎに経験は重要だが、経験をさらに補強する手段はどうするのだろう。もしくは経験を後継者に正しく伝える方法はどうするのか。OJTにしても、適切なOJTの仕方という物があるが、実際にそれと照らし合わせて行っているのだろうか。

短期間での外部教育は即戦力に成り得ないものが殆どだと思う。成り得る教育とは、パソコン操作、プログラム言語、等々の所謂周辺技術スキルという物で、それらの周辺技術は陳腐化が早いこともあり、カリキュラムにそぐわない。根幹となる要素技術スキルの為の勉強となれば、それが身に付くまで時間がかかる。でも新たなスキル技術の勉強は、まず受講する人の意欲が高まり、別な視点からの見方が出来るようになり、外部での教育のため自分のスキル程度を客観的に知る事にもなる。

つまりは、部署内で教育に関する、それぞれの考え方についてきちんと持ち、それらが機能しているかで、彼らの言うことが正しいかどうかが決まると思うのだ。そして現状において、残念ながら当部署では教育に関しては何も行われていなかった。

それに、技術者にとって、1つの技術に深く勉強する人もいるとは思う。でもそう言う人であっても、新しい技術動向を知ることは間違いなく必要なことだと思う。

さて、「能力」の話だけど、上記のやりとりで僕は気が付いたことがあった。それは、どうも多くの人が言う「能力」とは、「資質」の事を指している場合が多いかもしれないと言うことだった。そして「スキル」にあまり重きを置いていない状況もあるのかもしれない。さらに、「能力」とは全人格的な事を指すのでなく、局所的な事を指すと僕は思っているが、その点についてもどうも彼らと考え方が違うようだった。

僕にとっては「能力」とは、与えられた業務を成功するための力、だと考えている。だから、業務が違えば当然に必要とされる「能力」も違う。さらに言うと、「能力」に必要なものは、「資質」と「スキル」だと思う。どちらかが欠けるのは、バランスが崩れていると言うことに繋がる。

「資質」は、個人差がある。だから個人毎に良い面を延ばし、不足面を育てる必要がある。育てるためには何よりも必要なことは、個人の意欲でしかない。だから、意欲を高めるためのカリキュラムが必要となる。それらはスキル取得の為のカリキュラムでも、高まる場合が多いとも思う。

「スキル」は技術だと思う。だから誰でも取得は可能だ。「資質」の不足分を技術である「スキル」を取得する事でも十分に補うことが出来ると思っている。

具体的に「議事録作成」を例にとって話せば以下の通りになる。

1)議事録作成には、まず会議に出席し議題を把握した上で、発言内容の理解と要約が必要となる。その際に必要な資質の中で重要なのは、自発力、記憶力、企画力、思考力、判断力、課題把握力だと思う。またスキル面で必要なのは、コミュニケーションスキル、議題の内容、実現可能な技術スキル、会議出席者が所属する部署機能の動向。

2)実際に議事録作成する場合、今であればPCで作成メールで送信となるだろう。その過程で必要な資質は、自発力、達成意欲、企画力、シナリオ力、図解力、文章力、要約力。スキルでは、PC操作、各種ソフト操作、議事録フレームワーク。

つまり、議事録作成では文章力(文才)は、ほんの一部分でしかない。
参考までに僕が参照している「資質」一覧を掲載する。

20050122a4cd6be0.GIF例えが悪いかもしれないが、「資質」と「スキル」の関係は、犬を猟犬にするために行う訓練と考えてみる、犬には元々猟犬になる資質を持ち合わせているが、訓練をしなければ猟犬として役には立たない。そして訓練を受けた犬だけが、猟犬としての一歩を踏み出す事になる。あとは実際の猟での経験がその犬を育てることになる。

人の場合も、「資質」と「スキル」だけでは当該業務を行う最低限の能力を持ったにしかならない。あとは業務における経験が、その人の自信と信念に繋がっていくことになるのだろう。

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