2005/02/05

セキュリティ業界に入った元ウィルス開発者

「チェコの学生Marek Strihavkaは地下組織「29A」のメンバーとして、5年間にわたり、コンピュータウイルスの作成に携わっていた。しかし運命のいたずらか、Strihavkaはかつて自分も作成していたウイルスの感染拡大を食い止める仕事に就いた。」
(CNETJAPAN「私はいかにしてウイルス作者となったか」より引用)

反社会的な行為を行ってきた彼の言動は、例えて言えば、偽札作りの技術に興味を持ち、社会に出回らないからと言って精巧な偽札を作るのと変わらないように思える。「表現の自由」にも自ずから制限がある。その事を理解しない発言と受け取られても致し方ないのかもしれない。

彼を危険と思うのは技術以前の話だ。でもだからこそ彼の発言に別の意味で頷く箇所もあるのは事実だ。

「私は小学生の頃からコンピュータウイルスに関心を持っていました。現在の興味分野はコンピュータセキュリティです。そう考えると、私はウイルス対策プログラムの開発に適した人間だと思います。」
(CNETJAPAN「私はいかにしてウイルス作者となったか」より引用)

別の意味とは、コンピュータウィルスに対応するには、技術だけでなく、その制作者のマインドも理解する必要があると思う点。そして、危険だからこそ早めに社会に取り込み、その考えこそが危険であることを知らしめるべきだと思う点、の2つである。

制作者のマインドを理解することで、早めに対応することも可能になると思うし、場合によってはあらかじめ対応機能を組み込むことも出来るかもしれない。早めに社会に取り込むことで、他のウィルス作者に対して行為を止めさせる説得ある意見を提示できるかもしれない。

ウィルスにおける弊害はきわめて大きい。勿論、そのための新たなビジネスチャンスが産まれる事のメリットもあるが、デメリットの方が圧倒的に大きいと思う。例えば、ウィルスによる直接の被害の他、生産の停滞、ストレスの増加等々、そしてそれ以上に僕にとって怖いのは、ネット社会そのものが監視社会に移行する一因になっている様に思えるからだ。

いわば、彼の様なマインドと技術を持った人をセキュリティ業界に使うことは、「毒をもって毒を制す」例えに近いかもしれない。潜在的なリスクは当然にあるが、それは社会の中に取り込むことによって、徐々に低めることが出来るのではないかと思う。

しかし、僕にとってこの記事自体が意図的に造られた可能性も否定できない気持ちがあるのも事実。それはCNETの記事に掲載している彼の写真からも見て取れる。
普通CNETのコラムに掲載する作者の写真は、正面を向き笑顔のパターンが多い。でもこの記事の場合、上から見下ろし斜めから映している。それによって、この写真を見たときの印象は悪くなる。CNETの意図をそこから感じる。
また質問内容も印象を悪くする方向に持って行っているかの様にも思える。

仮に意図があるとすれば、それは一体何故だろう。記事を読む人の中で、彼と同じようにウィルスに興味を持つ子供達に対する配慮かもしれない。でもそれなら別の手段もあるはずだと思う。

実を言えば、このCNETの記事を読んで、僕が一番興味を持ったのは、この点だった。
何故、今この記事を載せるのか?また彼のイメージを全体的に悪くさせる理由は?

勿論、僕のこの疑問は憶測にしか過ぎないし、満足する回答も得られることはないだろう。ただ、彼を社会的に排除することに意図があるとすれば、それは僕にとっては誤りであると思う。

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