2007/05/07

鎌倉の海

連休中に急に海の写真を撮りたくなった。その思いは突然に僕の中に沸き上がった。
その時、近くの公園の様子でも撮りに行こうと僕は表に出たばかりであった。
空は青く、風は心地よい。僕は交差点で、公園を目の前にして真っ青な空を見上げた。
空の青さから海の青さを連想したわけでもない、甘い花の香りから潮風が恋しくなったわけでもない。
ただ、どうしようもなく僕は、今日これから海辺に立って海風に当たるプランを素敵に思ったし、それを実行したいと思った。
そして僕は海に向かった、というわけだ。






鎌倉の海に着いたのは午後の2時頃だったと思う。浜辺には思った以上に人がいて、それぞれに楽しんでいる。
浜辺以上に、海ではウィンドサーフィンを楽しむ人たちがいて、浜辺から見ると、それらの帆の色の鮮やかさが、海の色、空の色に映えてとても美しい。






海風は強く、上空ではカラスと海鳥が凧のように漂っている。
沢山の写真を撮った、でもそれらは写すと同時に、結果として良い写真でもないのがすぐに伝わる。
いつもの写真サイト(Flickr)に投稿しようとは思えない一連の写真。
写ったものは、鎌倉の海だけではない、僕の気持ちもどうしようもなく顕れている。
僕はカメラの液晶で絵を確認しながらそう思う。






しばらくして、 僕は海の写真を撮るのをやめる。おそらく計画のどこかで僕は間違ったのだ。
僕はこのような写真を撮りたいと願ったわけではない。
でも今日は、現在の僕は、こんな写真しか撮れない。
それは構図とか、露光とか、そういった技術的な問題ではない。
どうしようもなく僕の目は、周りの風景に写真を見つけてしまうのだ。
世界が写真に満ちあふれているのであれば、写真を撮る意味などどこにあろうか。






久しぶりの海だった。それはそれで楽しい思い出ではある。
ただその思い出は、これら一連の写真によってしか喚起されない記憶に成り果てることも間違いない。
僕は海の写真を撮りにここまで来て、そして失敗したというわけだ。
しばらく浜辺に坐り、ただ海を眺め続けた。
遠くで子どもの歓声か聞こえる。そして同時に母親の笑い声も。
幾分幸せな気持ちになる。






三浦半島の山間を抜けて僕は帰った。
所々に小さな畑があり、そこには色とりどりの小さな花が咲いていた。
空はどこまでも青い。雲は遠くの憧れのように、ゆっくりと流れていく。
道が二つに分かれている。僕はまっすぐを選んだ。
風が一段と強く吹いた。

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