青山の茶道具の店に寄った。僕は今売られている茶箱とか茶巾袋がどのようなものか知りたかった。
その店の女主人はとても話し好きな方で色々なことを僕に語ってくれた。カタログとか店で売っている道具を色々と見せてくれた。
今は茶箱も中に収める道具付きのセット売りが殆どだという。野点をしたい場合も同様で、野点向きの茶筅とか茶さじなどもその一点での販売は行っておらず、セットものしかないとのこと。例えば茶筅の場合、持ち運びが便利な小ぶりのものが望ましいし、消耗品なのでいずれは摩耗するわけだから、単品売りがないのは少々厳しい。それに自分の気に入った道具類を集めてテーマに合わせての組み合わせが出来ないのも残念だ。そんな話を主人と語り合った。「今では外に多くの遊びがあるのだけど、それらは工夫なしでセット売りのような遊びばかりですよね」と語る主人の言葉は僕にとっても厳しい一言だ。
もとより僕に茶の作法の心得などはしらない。でも茶の目指すものは知っているし共感は持てる。僕にとってはそれだけで十分だ。あとは茶道具の一つ一つの機能とか使い方さえ知っていれば良い。僕はただ外で抹茶を飲みたいだけなのだ。川辺とか海辺とか、もしくは寺の境内とか気持ちの良い公園とかでお茶を点て飲めたら美味しいだろう。そんなことしか僕は考えていない。結局の所お茶は、ある人にとっては生涯をかけても良いほどの、遊びなのだと僕は思う。だからこそ自分の好みを優先したいと思うのだ。今回は下見程度のつもりで店を覗いただけだが主人との語らいで思わぬほど気持ちが入ってしまった。まずは家にある道具で試してみようかなと思い始めている。