大阪で開催したグループ展「写真。」に行ってきた。グループ展「写真。」はFaceBookで繋がった有志30名がそれぞれ2点の合計60枚の写真で構成されている。「B0サイズ、一人二点」のルールを設け、あとは各々の裁量に任せる。ただ「写真とは」という問いかけに対する30人30様の答えとサブタイトルにあることもあり、今まで撮ったどの写真を選択するかを出展者達は悩んだことだろう。でも、おそらくそれ以上に悩ませたのは「B0サイズ」というルールかも知れない。作品のサイズは現代写真において重要な位置を示す。その作品の大きさはある意味必然でなければならない。逆に言えば「B0サイズ」のルールは「B0サイズ」の写真を選択せよとの命令でもあるのだ。
東京を出発し大阪に着いたのは午後の1時過ぎだった。朝から何も食べていない。折角に大阪に行くのだから着いたら美味しいものでも食べようと思っていたのだ。そして着いたら着いたらで先に目的を済ませてしまおうと、初めての大阪での地下鉄を経験しながら最寄りの駅「大阪港」に着いた。着いた時間は午後の2時頃。「大阪港駅」は大阪のベイエリアとしてなかなかに人気のある場所らしい。人の流れに沿って歩いていたら、反対側の出口に向かって歩いていた。慌てて引き返す。そして展示場である「海岸通ギャラリー・CASO」に着いたのは午後の2時半頃だった。きっと僕はワクワクしていたのだろう、空腹であることなどすっかりと忘れて展示場の中に入っていった。
グループ展はCASOの入り口の大きな一室にて開催していた。四面の壁にぐるりと上下二枚の30組が飾られている。さすがにB0サイズの写真は大きい。しかし大きいサイズの写真に見慣れているせいかサイズから来る圧迫感は殆ど感じられない。天気は雲が少なく青空が広がる。展示場の部屋のガラス窓から明るい日差しが差し込む。この明るさもこの写真展の開放感を助長しているようだ。ぐるりとゆっくりと写真を眺める。それぞれの出展者達の思いを感じる。写真展に行くのが好きな理由はまずはここにある。写真は人の世界からやってくるものだから、写真にそれらが写っていなくとも、人はフォトグラファーの思いを推察することが出来る。
実を言うと気に入った写真が何枚かあった。これからその事について書こうと思う。
中澤有基さんの作品。「写真とは」のテーマで昔から有る手法。剥がされた写真、残された写真。そして写真の写真。残された写真が良い。その写真が残されることで、逆に剥がされた写真の輪郭が想像できる。それ以上に好きになった写真は同じく中澤さんの集団写真の写真だ。これも写真の写真の形式を取っているが、この集団写真はフィルム写真をデジタル化し、その上でB0サイズに引き延ばしている。ゆえに少し近くに寄ればピクセルの四角い枡で集団写真が構成されているのが明確にわかる。写真の写真という写真の不同定性だけではなく、フィルム写真とデジタル写真からくる写真とはの問題設定が見えてくる。さらにB0サイズへの必然性がこの写真にはある。それに問題設定が重なる点で僕は中澤さんの写真に気を止めたのかも知れない。
タウラボさんの作品は赤いスカートをはいた人物がバーベルを持っているという修辞性が高い作品。おそらくタウラボさんは写真をその様に考えているのだろうと想像できる。無論のことスカートをはいているからと言って、顔が見えない限り、性別は不明。ダンベルの象徴性は使い古されてはいるが。単純な構図でB0サイズの真ん中に赤いスカートの構成はなかなかに目を惹く。
そして友人の野坂実生さん。今回のグループ展は彼女に誘われて観に行った。元々彼女の写真には叙情といったものを僕は感じている。ロマンティックという言葉は適切ではなく、あえて言うのなら日本的なもの。それに内容はウエット。勝手な思い込みだが題材に「水」が多い様に思う。コラージュもしくはフォトモンタージュして造られる作品は、それらの手法を駆使することが彼女の作品の特異性を示しているわけではない。僕からみると彼女の作品で彼女らしさを出しているのは色だと思う。そしてその色こそが、おそらく日本的なものを僕に感じさせるようにも思えるのだ。きっと色分析をすれば和の色の使用頻度が高いように思えるのだがどうだろう。もうひとつ言えば、写真にて何を現そうと彼女の作品の根底には楽天的な印象を受ける。「和」「水」そして「楽天性」。きっと野坂さんは僕の感想を否定するかも知れない。でもそれでも構わない。これまでの中澤さんの写真、タウラボさんの写真も含めて僕の単なる印象に過ぎないのだ。
写真展には一時間くらいいたかもしれない。さすがに空腹であることを思い出してきた。久しぶりとは言いながら前回は出張で来ただけなので初めてに近い。中心街に向かって行ってみよう。そこで何か美味しいものを食べるのだ。CASOを一歩出ると夕方とは思えない日差しの強さに一瞬たじろいだが僕は駅に向かって歩いた。
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