目の前を走り横切る猫がいた。梅林のほうに向かっている。梅花の時期は当に過ぎ去り、葉が生い茂る梅は白や紅の花を咲かせたことなど想像もできない有様である。勿論それはそれで葉と葉の間に実る梅を含め風情を感じるのではあるが、初春のころとはまったく違う。
葉で密集した梅の木は、幹が支柱となった旧式のテントのように、中は適度な空間がある。公園の猫はそこに身体を休めに来るのであろう。
僕はその猫の後を追いかけた。やはり猫は梅の木の中に入って行き、根元から2mくらいの高さにある太い枝で落ち着いている。忍び足で近づく。でも猫は持ち前の鋭い嗅覚と聴覚で僕の侵入を見逃しはしない。ぱっとこちらに振り返る目は、驚き以上に恐怖がそこに宿っていた。
「怖がらなくてもいいよ。写真を撮るだけだからね」と言いつつカメラを向け写真を撮る。それがこの写真。これを撮った後、猫は素早い動作で別の梅へと移動していった。悪かったかなぁとその姿を見て少し思った。
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