2006/11/29

教育再生会議での緊急提言

TVでは一人の男がマスコミが差し出すマイクに向かって興奮して語っていた。

「いじめられる側が学校に来れなくなるのはおかしい」

「いじめる側を出席停止にすべき」

何事かと思ってTVに注視すると、どうやら教育再生会議にて、いじめ問題緊急提言を早々に行うらしい。その骨子を事務局の男性が語っていたのだった。いじめは犯罪であることを十分に認識させるために、いじめた児童・生徒に出席停止など厳しい処置を取る。教員によるいじめは懲戒処分などの対象にする。これら教育再生会議での緊急提言は、現在のいじめ問題に対する状況の下、時代の空気に見合った提言なのかも知れない。

ただ運用時において幾つか課題が出ることも事実だとは思う。例えば、いじめ問題は教員およびその当事者家族が知らされないことが多いが、この提言でその面が緩和されるとは思えないこと。いじめる側の特定を客観的にどのように行うのかが不明なこと。仮にいじめられる側の告発でのみ特定される場合、それは公平とは思われないということ。その上で、告発された相手が否定した場合、どのように扱われるのかが不明なこと。例えば、いじめる側がクラスの殆どの生徒が該当する場合、どうするのかということ。その中で、いじめの責任分担をどのように行うのかと言うこと。また、どこの組織がこれら運用面を管理していくのかということ。運用を逆手に取るケースを見極めるチェック機能はどうするのかということ。等々、考えればきりがない。

この提言には、いじめが犯罪であり、いじめを行えばそれに見合った厳しい処罰があると生徒及び教員に知らしめる意図がまず最初にある。しかし、いじめが犯罪であれば (僕もそれに同意するが)、法律に則り粛々と犯罪者を処置していけばよいのであって、わざわざ緊急提言で語ることでもない。

しかも刑罰が厳しいことが犯罪抑止に効果があるという統計は何処にもない。さらに、それが実際に運用するにおいて、様々な問題を解決しなければならないのであれば、提言自体が絵に描いた餅となり、結果的に無意味になりかねないとも思う。

だからか提言自体、いじめに対する有効手段が有識者を持ってしても不明であることの裏返しであると、僕には思えてくるのである。おそらく教育再生会議でも場当たり的と承知の上での提示なのかもしれない。しかし、いじめ問題の難しさを考えたとき、この場当たり的な対策は逆に問題を複雑化させはしないだろうか。伊吹文明文部科学相が適用は慎重にと語った事は、その意味で、僕は当然だと思う。

さらに、この事務局の男性の興奮気味の語り口での提言は、いじめ問題に「報復」という考えを示している。この緊急提言が教育再生会議でどの様に承諾されたのかが、僕にはとても気になる。一見正論のように思えるこの提言に対し、反対意見は出なかったのであろうか。異論が出ずに、この緊急提言がなされたとすれば逆に怖い。

僕にとって、いじめ問題への対応として考えられる点は以下の通り。

1)1クラスの人数を20名以下にする。
2)2クラスで3名の教員を配置し、協議と合意の上クラスを運営していく。
3)主担任はその3名が短期で巡回し受け持つ。
4)隔月に1回の個別父母面談を行う。
5)個別面談に欠席が多い生徒宅を教員は訪問面談を行う。

まずは学校の思い切った制度改革が必要なのだと思う。

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