2005/07/09
「猫への詫び状」、過去を振り返り君を思う
新規にパソコンを購入し、旧データを整理していたら以下の文章が見つかった。この文章は家の飼い猫であるレオが糖尿病を患ったときの話で、あのとき僕は本当にレオが死んでいくと思っていた。そのレオの予想される死にたいし、彼にその前に詫びたかった。これは僕からレオへの「猫への詫び状」である。
この文章を書いた後、レオは奇跡的に回復する。死に瀕したときから約五日間の入院生活だった。その後レオはインシュリンの注射を朝夕する生活に入る。食事は猫用糖尿病の缶詰。インシュリンは人間と同じものだが、一度に注射する量が違う。また毎日、尿から血糖値を調べた。つまり人間の糖尿病への対応と何ら変わらない。
そういう生活を数ヶ月続けたある日、レオの血糖値は劇的に変化する。通常の状態に戻っていたのだ。治らないと言われた糖尿病が治ったかのように見えた。医者に言ったところ、医者も驚き、インシュリンの注射をやめましょうという話になった。そしてその後は食事制限の取りやめと続き、そしてすっかり完治してしまった。それが2002年4月の話だ。それから2年後にレオは家を出て行ったきり戻ってはこなかった。
猫の意識とはたぶん人間とは違うと思う。人間は意識と自然的身体が一緒にならず、互いに強く影響を与え受けながら、その欲望はとどまることを知らず、また対象も眼前にあるものに限らない。でもおそらく猫たちは、眼前の対象にしか意識がなく、欲望はその都度眼前の対象で自足する。でも、少しでも他の動物と一緒に暮らせばわかるように、僕もレオのことは猫という動物ではなく、僕の意識の中では、人と同様に限りなく深い意識を持っているかのように感じ、接してしまうのである。その中のレオは、ちょうどこのイラストのように、モーターサイクルで長い旅に出た一人の男の様である。旅は戻る場所があり、戻ることを暗黙の中で約束している、しかし実際は家に戻らないのも旅である。行き先で何が待ち受けているのか不明で、もしかすると旅先で定住するかもしれない。僕は今ではそう思っている。彼には彼の猫生を生きる自由があるのだ。
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レオへの詫び状
今回の出来事で僕は君が死ぬかもしれないと覚悟しました。本当です。ですから死んだときの事を考え、レオのいない世界を想像しました。
まず考えたのは、君が死んだときに周りになんて話そうかと言うことでした。多分みんな悲しい思いをする事でしょう。次に、もう猫は飼うのは止めようと思いました。こんな悲しみを味わうのはもういいと思いました。さらに君のいないと後はジュニアだけだな。ジュニアを君の分も含めてかわいがろうとも思いました。
でも突然に君の思い出が、本当に多くの思い出が、僕の心を横切りました。それは一瞬の出来事でしたが、僕はその思い出を意識的に何度も何度も繰り返しました。
君が家に来てから2年半たってます。その間は決して楽ではありませんでした。どちらかと言えば苦しい方だったのかもしれません。仕事のこと、自分のこと、僕の周りの親しい人達のこと等々、誰でも生きていれば問題を抱えています。でも、そういうことで人生は深くなるとは渦中にいる者にとっては無責任な言葉です。
頑張って生きているなかに君が来ました。君が来ることで僕らの心はどんなに安らいだことでしょう。
もう少し細かくかければいいのでしょうけど、つぶさに見てきた君にとっては十分に知っていますよね。僕は君と生活し、最初は君の擁護者としていたと思います。僕は君に与えているだけで君から受けることは期待していなかったし、受け取れる者は何もないと思っていました。
期待していないのは今もそうですけど、君の事を思いだし、君から多くのものを受け取っていたことに僕は気がつきました。それも僕が与えたと思っていた事より多くの事を君は僕に与えてくれたのですね。
きっと君がいないと仮定したこの2年半は殺伐とした2年半になっていたことでしょう。これは僕の実感です。そしてこの差が君が僕に与えてくれたのです。それはとてつもなく大きな物です。僕は君にいなくなって欲しくないと、強くその時に思いました。それは僕の為だけではなく、これからつらい生活が君に待っていようとも、僕は出来るだけの事をしよう、君に感謝の気持ちを持とう、君と離れたくない。そんな感情です。
そんな気持ちが強まったときに、医者から「奇跡です」と言われるくらいに君は立ち直りました。その時うれしさと同時に、君への感謝を伝えられるチャンスを与えてくれた事に喜びました。また僕は命という大きな力を感じることも出来ました。これもあらためて君が僕に教えてくれたことです。
これからも一緒に生活しましょう。共にお互いの命を歩いていきましょう。
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十分に僕は君に感謝を告げることができたのだろうか・・・
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