2005/06/05

書籍備忘録

・塔の思想  マグダ・レヴェツ・アレクサンダー
何回か読んでいる本。塔好きの僕にとって、塔を美術史もしくは建築史的でない視点で論述しているこの書を始めて読んだとき新鮮な感動を味わった。
佐原六郎の「世界の古塔」と同様に塔に関心ある者にとっては必読書かもしれない。日本で同様の立場で書かれている本は、梅原猛氏の「塔」くらいだと思う。ただ、彼の「塔」は、いまいち実感が僕には伝わらなかった。「塔の思想」は何故か時折読みたくなる。ヨーロッパの塔中心なので、日本の塔を含めそのほかの地域の塔を考えると違和感をもつのは正直言ってあるし、それを含め、感想文を書きたいと思っているのだが、なかなか難しい。

・マイノリティの権利と普遍的人権概念の研究  金泰明
現象学研究会のサイトで紹介していたので読む気になった本。目黒区と世田谷区の図書館に所蔵してなく、他区図書館から回ってきた。案外早く手に入った事から、この手の本は人気がないなぁと思った。目次をぱらぱらとめくってみると、どうもキムリッカの多文化主義に影響を受けているようだ。少し前に読んだ杉田敦氏の「境界線の政治学」では、リベラリスト、共同体論者、多文化主義者の問題点が洗い出されていたので、その批判に対し、この書ではどのような回答をしているのか興味が出てきている。しかし、厚い本だ・・・

・記憶 物語  岡真理
岩波の思考のフロンティアシリーズの一冊。読みやすくさらっと読み終えてしまった。とくに可もなく不可もなくという感じ。ただ、「プライベートライアン」の映画評が面白かった。
また、最初のほうで「物語」と「小説」を切り分けている事に、少々疑問を感じた。ポストモダニスト達の文章は面白いと思うが、だから何?と言いたくなるのはどうしてなのだろう。

・リヒター、グールド、ベルンハルト  杉田敦
政治学者でないほうの、評論家の杉田敦氏の本。この本は以前より読みたかった。3人の芸術家に関する評論みたいなもの。中心はゲルハルト・リヒター。
『この本は、グールドやベルンハルトが、その背後にいるリヒターの方を指し示すように、リヒターのさらに背後の何ものかを指し示している。それがアートだ。』
うーん、なかなかこのフレーズが良い、と一人悦にいっている。

・時の娘たち  鷲津浩子
実は、今回図書館から借りて、一番はまりそうな本がこれ。最近発売されたばかりの本だが、誰も予約者がいなくてすんなり借りることができた。人気作家であればこうはいかない。
アメリカ文学に関する研究書だけど、その見方というか、筆者の論の進め方がユニークだと思い、それが面白そうなので読みたいと思った。テーマは「アメリカ」文学とは何か。なぜ、アメリカ文学だけが、国名をつけているのかという素朴な疑問からこの研究書が出発している。しかも、手がかりとして、「アート」と「ネイチャー」から始める。ぱらぱらとページをめくると、不思議なからくり機械とか、そういうものが少なからず登場してくる。第一印象は不思議な本。

・詩集「石」 オシップ・マンデリシュターム
エッセイ「対話者について」を読みたくて借りてきた。このエッセイに、以前にブログで書いた投壜通信のイメージが書かれている。短いエッセイだが、さらっと読むのに抵抗があり、何回か繰り返し読もうと思っている。

・ジャンケレヴィッチ  合田正人
合田さんの文章が好きである。この人は哲学者よりも詩人の素養を持っているのでないかと、失礼ながら文章を読むとそう感じてしまう。正直言って文章はわかりづらさがあるし、明解ではない。なにより、合田さん自身がわからなくて悩んで書いているような、そんな印象をもってしまう。とくに、「レヴィナスを読む」を読んでそれを強く感じてしまった。でも言葉の使い方が、とても美しい。だから、合田さんの文章は僕にとっては言葉に身をゆだねるという、およそこの手を書籍にふさわしくない読み方をしてしまう。読み終えたときに、具体的には何も残らないが、全体のなんというかイメージが身に残る。でも結構そういうほうが忘れなかったりするものだ。あ、この本はジャンケレヴィッチの評伝みたいな本。

さてと・・・こんなに読めるのかと自分では思っているが、何とかなるだろう。途中でつまらなかったり、何が言いたいのかがわかったら、さらっと流すと思うし。でも言葉というか、文字というか、その中にどっぷりとつかりたい派なので、できればさらっと流す部分は少ない事を願ったりもしている。

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