新海さんの2007年公開アニメ。「きみとぼく」系といわれるアニメ。「きみとぼく」系とは「セカイ系」の一種、とカテゴライズすることは簡単だが、このカテゴライズは一つの思想に組することでもある。そしてその思想は多くの文芸評論と同様に製造された作品とその消費の面でしか捉えてはいないのも常のことだ。不思議なことに中間層が欠如していると揶揄される「セカイ系」の作品を製造するに辺り、それらの中間層との関わり抜きでは造る事ができないのも事実なのだと思う。「秒速5センチメートル」を構想・製作・製造・消費される行程の中で、多くの人と交流しながらも新海さんのこの作品にたいする思いとか熱意は少しもぶれてはいないように思える。そのぶれない思いは一体どこから来るのだろう。この作品を造りながら新海さんは消費のことも考えていたのだろうか、たとえばこんな風にすればお客さんは喜ぶとかそんなつまらぬことだ。新海さんのぶれない思いが、僕がこのアニメを観てそう感じさせたのであれば、このアニメは結果的に成功したと言うことなのだろう。その新海さんの思いはアニメのストーリーの中にあるわけではない。それはストーリーの中にあるのではなく場面毎の細部に宿っている。その細部に宿っている何かの連なりが新海さんの思いを僕に伝える。しかしその思い、その細部を、僕が人に伝えることは難しい。結局のところアニメに登場する現実に存在する商品の細やかな描かれ方や空気感を感じさせる風景の描き方などの形式を語るしかない。
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