2005/04/05

岸部シローさんと爆笑問題トーク番組

昨日たまたま付けたTV番組で、岸部シロー氏が自己破産した時のことを放映していた。爆笑問題が司会者で、その他色々なタレントが出演していた。何かお金に関するバラエティ番組のようだった。岸辺さんは。「なんとかなるやろ」との気持ちで次々に借金を重ね、ついに5憶円以上の負債を抱え込んでしまった。

岸部さんは既に白髪が交じり老齢に達しようとする年齢であり、風采も若さが影を潜め、男性である僕から見ても、色気に乏しくなっていた。そして喋りもはきはきしてしてなく、口の中でごもごもという様なので、良く聞き取れない。と、まぁこれは僕の見方なので、かなりバイアスが入っているのは間違いない。ただ憎めない雰囲気は健在だったし、そこから良い味を出していた。

途中から奥さんが登場して、借金時代のことを振り返り、夫である岸部さんに宛てての手紙を朗読した。しかし、その奥さんが、もの凄く若くて美しいのである。
手紙の内容は簡単に云えば次のようになる。
「岸部さんと結婚し、本当に今まで考えもしなかった経験を色々とした、楽しかったことも多かったし、自己破産の時は頭が真っ白になった。でも15年なんとか一緒に歩んできたし、これからも共に頑張っていきたい」
途中で感極まって奥さんは目頭を押さえ、ゲストの女性タレントの何人かはもらい泣きをしていた。

その手紙を読み終えた時、すかざす出た爆笑問題の一言。
「この男の何処が良くて結婚したのですか!」
それと同時に起きる、ゲスト達の笑い声。それを承知にタイミング良く出した突っ込みだった。
奥さんが答えるのでなく、その問いに岸部シローが答える。
「ほら、僕って男ぽくないでしょ・・・」
それを最後まで聞かずに、再度爆発問題が突っ込む。
「しかし、本当にこの男の何処が気に入ったんですか!」
再度ゲスト達の笑い。

岸部シローの持つ雰囲気と、そこに突っ込む爆笑問題のトークとかが一緒になって醸し出す雰囲気がとても面白く、僕も思わず笑ってしまった。

たぶん、爆笑問題が「この男」と言ったときの「この男」とは、「いい男」とは対角線上にある男のことを含んでいるのは間違いない。
つまり、家族にお金を使うわけではなく、自分の趣味だけに莫大なお金を使い、気楽に友人の保証人となり、それを「なんとかなるさ」で繰り返し続けて自己破産になった男。
爆笑問題の「この男の何処が良くて」には、「良い所なんてないじゃない」の意味が込められていて、そのことに対し、その場に居合わせたゲストのタレント達、爆笑問題、そしてついでに言えば岸部シロー、テレビを見ている僕に浮かんだのは、殆どおなじイメージだったように思う。

男に対し、「いい男」と「だめな男」、そして「悪い男」と色々な区分けがされる。それらの線引きはとても曖昧でかつ個人的だと思う。でも、その番組では、一瞬にしてそれらの垣根が取り壊され、同じ気持ちを味わったような気がしている。これってなんなんだろう。テレビの持つ力なのかも知れないが、僕には「男」として要望される何かが眼前に出現したような印象を持った。

そしてその要望されている「男」とは、多分「男」が「男」に対し要望している様にも思う。何故なら、番組の中で同意するかのように笑ったのは男性が多かったような気がするからだ。女性は、爆笑問題のリアクションに思わず笑うと言った感じで、笑いの質が違うような気がした。
奥さんにとって見れば、爆笑問題の問いかけは、他の人にはわからぬと思ったのではないだろうか。それに自分でも答えられない。それに、夫である岸部シローの答え「男ぽくないでしょ」も的はずれだと思う。

男は「男はかくあるべし」と男に向かって要請し、それが基準になって、岸部シローは「僕は男ぽくないでしょ」と答える。同根と言ってしまえばそれまでだが、一種の男という呪縛がそこにあり、それは語られることはないけど、知らぬまに男を縛り、行動を規範している。そんな感じを受けた。

考えてみれば、僕も子供の頃に友人から、「男だろ」とか「男なら、細かいことを気にするなとか」、「男なら、さっぱりと諦めろ」とか「男のくせに」とか言われたことがある。さすがに、高校以降は言われなくなったが、それでも失恋したときなどは、「男なら」と自然に思ったものだ。

岸部さんの奥さんの手紙はテレビ用として脚色はある程度あるかもしれないが、底に流れている気持ちは十分に伝わった。岸部さんの行動に迷惑を被ったかも知れないが、やはり岸部さんの人柄の良さが、苦労しながらも、15年夫婦として過ごして来られたのだと思う。そして、そこに女性がみる男の「良さ」と男性が思う男の「良さ」の違いが大きく見えたような気がして、とても面白く感じた番組だった。

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