2005/01/14

世界の漁獲量、半世紀で5倍

2005年1月13日産経新聞朝刊の一面に掲載されていた記事。他の新聞では掲載していなかった様に思える。何故産経新聞以外では本記事が掲載されていないのだろうか。素朴な疑問を持つ。

見出しは大きく以下のように書かれていた。
「世界の漁獲量、半世紀で5倍 乱獲深刻 中国消費が突出 FAO統計」
この見出しだけを読むと、中国が問題を引き起こしているかのような印象をもってしまう。しかし記事を読むとその様なことではない。以下に抜粋する。

「世界の漁獲量がこの半世紀で約五倍に増え、世界規模で深刻な乱獲が進んだことが、国連食糧農業機関(FAO)の統計で分かった。研究者らの調査では、世界の魚種の約三割が過剰に取られており、海域によっては五年間で魚が四割も急減したという報告もある。低カロリーの魚への需要が増大するなか、国際規制を守らない操業のケースもあり、生態系全体に着目した漁業資源管理などが課題になっている。」

■過剰に取られている3割の魚種とは?4割急減した地域は一例の話だと考えるが、気象との因果関係を切り離した上での調査だったのだろうか。ただ確かに乱獲は実際に行われているようだ、目が細かい網で一挙に大量に取り、それらを養殖の餌にするといった話を聞いたことがある。そして、それらの養殖魚は日本市場に向けての商品となる。

「FAOの統計によると (中略) 中国の漁獲量は千七百万トンと突出、二位ペルーの千七十万トンを大きく上回っている。三位の日本は五百万トンほどだ。中国は、九四年以降、北西部太平洋、東シナ海を中心に漁獲量を増やし、魚の世界最大の生産・消費国となり、FAOの推定では中国人一人当たりの推計消費量は七二年の四・四キロから九九年には二五・一キロに増加した。日本の場合は約二十年間、一人当たり約七〇キロで、横ばいに推移している。」

■中国が世界最大の魚消費国になっても、1人当たりの消費は25.1kgとなり、日本の70kgとの差はまだある。実際には1人当たりの消費は、日本は世界の中での有数の消費国となっている。日本の漁獲高が約500万トンとしたとき、赤ん坊を含めて1人当たりの漁獲量は約41.7kgとなり、消費量の70kgとの差が出る。この差は輸入分と考えて良いのだろうか。そうであればその量は約360万トン分と言うことになる。

■記事にもあるが、中国では13億人の食糧を確保するために、腐心している状況があるのは間違いないと考える。今後、中国が益々経済的に豊かになれば、漁獲量は比例して事になる。逆に日本の場合、20年間1人当たりの消費量が変わらないのは、食生活の変化が大きいと思う。つまりは20年前と比べて、各家庭で月に食する魚の回数と内容が変わっているのでないだろうか。個人的な感想を言えば、各家庭での消費は減っているように思える。しかし延べでの消費量が変わらないとすれば、どこかで逆に増えていると言うことになる。消費する内訳を知りたいと思った。

■中国が先々消費量が増えたとしても、日本の1人当たりの消費量から見れば、まだまだ少ない。魚資源の枯渇が深刻な状況に陥っているのであれば、まず日本の対応が先のように考える。問題は中国ではなく、日本の問題なのだと思う。

■記事では、日本海のマイワシの減少をあげていたが、以前にTVでマイワシの量は、ある一定の期間で増えたり減ったりしているそうだ。現に米国カリフォルニアではマイワシは大量に収穫されている。ただ、自然的な傾向だけでなく、乱獲による影響からの関係もそこにはあるように思える。

■「持続可能な発展」の定義は、「将来の世代が自らのニーズに充足する能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすような発展」となるそうだ。でも今回の漁業資源への警告から思うだけでなく、そもそも何もしないままで「持続可能な発展」が困難なのは事実だろう。

■1992年にリオデジャネイロで行われた地球サミットで採択された中に、リオの二大原則と言われているものがある。1つは先進諸国の責任の重さは途上国より重たいこと。もう1つは深刻あるいは不可逆性な被害の恐れがある場合、その因果関係が科学的に認められていなくても環境の安全性を優先すると言うことだ。

■リオでの地球サミットの議題として漁業資源については特に出てはいないが、FAO調査の結果を見れば、科学的な因果関係の調査も必要だが、まず必要なことは日本の対策検討と意思表示かもしれない。勿論各国との協議は必要だが、無策のままであれば、最初に叩かれるのは日本であるのは、ほぼ間違いないと思えてくる。

0 件のコメント: