2005/01/26

禁止用語の取り纏め

今まで携わった業務の中で面白かったのが禁止用語集の取り纏めだった。

以前、会社でネットサービスを開始するというので、システム開発を行ってきたのだが、何しろ会社にとっては始めての分野だった事もあり試行錯誤の連続だった。

初めてのサービスを考えるときに、本当に色々とやらなくてはいけない事が多いと思う。例えば市場調査からビジネスプランの策定、プロジェクト体制の確立、開発、現行業務への引渡し、もしくは新組織の立ち上げ。大項目だけのかなり大雑把な話でもこのくらいはあると思う。

それがこのネットサービスに関しては、市場調査などの各種マーケティングは一切考えず、まず開発だったのだから、今から考えると恐ろしい話だった。

ただ開発といっても、開発する元ネタがないと開発しようがない。元ネタといっても、最初から詳細が欲しいのでなく、サービスの大雑把な内容と言ったところがまずは必要だが、実際はそれさえもなかった。

しかしサービスインは近づいてくる。営業に迫っても埒が明かない。それで思い余ってまずは開発側でサービスを考えていった。

参考になる事例は当時の日本にはなかったので、米国のコンサルタント会社から情報をもらった。しかしもらった情報は、米国のその時点での事情はわかるけど、日本に同じサービスを適用するには、法制面で無理があった。でも何となく検討している間で、おぼろげながらサービス内容の輪郭が掴めてきたので、サービス内容の概略を書いた。

概略ができたら、それをプロジェクトに提示して、営業を交えて詳細検討を行ってもらい、なんとか開発着手(といっても外部要件の入り口レベル)をすることができた。

ところが、ある程度開発が進んでいく段階で、お客様が任意で決めるIDについて、何でも許していいのかという話が、開発サイドから持ち上がった。

たしかに何らかの対策は必要かもしれないので、とりあえず開発は禁止IDリストありきで、進めてもらった。サービスに関する話なので、まず営業側に相談してみた。でも意見は特になかった。
「公序良俗に反する言葉を禁止すればいいんじゃない」、などと曖昧な回答をもらうだけだった。

それでは致し方ないと、それも開発サイドで作った。でも実際に開発行為に携わっている所は、忙しくてそんなことを考える暇も立場でもなかったので、結局僕が考えるしかなかった。

業務としては片手間にやり始めた禁止IDだけど、そのうちに面白くなり、何日かはそれだけしかしなかったように思う。その当時、ネットで検索しても、今ほどサイトが多いわけでもなく、禁止IDで即座に結びついた「放送禁止用語集」みたいなものを、見つけることができなかった。

そのときに受けた印象は、放送禁止用語とは、新聞での使用禁止用語から発生しているらしく、各社独自のポリシーで決めている様な感触だった。
何しろ情報がなく、期間も短かったこともあり、「えいやっ!」と開き直り、全て最初から自分で考える事に決めた。

正直言って、どんな言葉も文脈によっては、悪意に満ちた言葉になりかねない。もしくは、その気がなくても相手に不快な感情を持たせてしまうこともある。だから、禁止IDの言葉を捜すこと自体、意味があるかということにもなる。

ただ今回の場合、文脈ではなく、文字数制限がある中で、単語がそれだけで意味を持ち、尚且つ人に不快な感情を与える恐れがある言葉のリストを作成することだったし、原案を考えたとしても後でプロジェクト内でチェックを受けるつもりだったので、とりあえず気楽な感じで始めた。

始めは見つかる単語は数が少ないだろうと思っていた。しかし探したり、考えたり、想像したりすると、次から次へと出てきた。

僕の場合、いわゆる「差別用語」と呼ばれる言葉の数は少なかった。それより性的なことを印象付ける言葉がやたらと出てきた。
言葉というのは、その国の文化を表すかもしれないが、個人が持つ言葉のボキャブラリィはその人の(つまりは僕の)実態を表しているかのようで、それに気が付く事が、この業務を面白く感じた理由だった。

それらの言葉は、生々しく、かつ強く「性」を主張していた。これらの業務を通じて僕が思ったことは、「何故、僕は(人は)こうも性に対して情熱的なんだろう」ということだった。誤解しないで欲しいのは、いつも僕がそういうことを考えているのでなく、その時の業務でわかったという事。実際の僕はそういうことに、友人との会話をしても結構淡白(笑)方だと信じて疑わなかった。

しかもそのリストをプロジェクトの他のメンバーに見せたときに、「よくもまぁ、こんなに出てきましたね」と、少し苦笑しながら言われ、実は密かに傷ついた。
その時は、「ええ、ネットとか本とか、または人に聞いたりして、集めるのに苦労しました」と嘘を言ったけど、実際は誰にも聞かなかった。

結局他に意見はなく、しかもそれ以上の言葉も出なかったので、僕の案がそのまま禁止IDリストとなった。まじめに考える人が少ないって事なのかもしれないが、業務に携わった僕としては色々な面で勉強になったのは事実だった。勿論それらで得たことは、実際の仕事で生かされる事がほとんどなかったのも事実だった。

楽しい業務だったのは間違いないが、現時点で同じ事を任されたら、きっと大変な事になるような気がする。言葉の選択もそうだけど、まずネットでの検索が監視にあってできないように思える。

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