2004/10/17

斜陽館、旧朝倉邸等が重要文化財に

長谷寺本堂が国宝、斜陽館は重文に 文化審議会が答申 文化審議会(高階秀爾会長)は15日、長谷寺本堂(奈良県桜井市)を国宝に、斜陽館の名で知られる作家太宰治の生家「旧津島家住宅主屋ほか」(青森県金木 町)など12件の建造物を重要文化財に、篠山保存地区(兵庫県篠山市)など2地区を重要伝統的建造物群保存地区にそれぞれ指定するよう中山文科相に答申し た。(asahi.comより抜粋)
太宰が言うところの「風情が何もないだた大きいのである」家が国の重要文化財に指定されました。斜陽館があるのは津軽半島の真ん中の街金木です。も ともと津軽は幕藩体制時代の津軽藩が統治していた地域を言い城下町は弘前です。青森県は津軽藩と南部藩の北部が合併して出来た県ですけど、津軽藩と南部藩 は古くから犬猿の仲で、青森県が出来た際はその中間の位置にある寂れた漁村の青森が県庁所在地になったと聞いた事があります。太宰自身も自分が青森県民と 言うより「津軽人」としての意識を持っていたのではないかという気がします。

ところで、斜陽館は戦後に津島家が手放し、旅館となっていましたが平成8年に金木町が買い取り「太宰治記念館」として保存されています。
今回その他に重要文化財指定を受けた家屋に「旧朝倉邸」 があります。こちらの方は斜陽館と違い、はじめは個人の邸宅から政府の会議所として大事に使用され、結果的に保存状態も良く残されてきましたが、国の経済 状態の悪化から整理対象になる恐れがあった建物でした。今回重要文化財になりひとまず保存される事になると思いますが、今後どのような形で維持されていく のかは未知数だと認識しています。

片方は行政側が買い取り保存に向かい、もう片方は行政側が手放そうとし保存が危ぶまれている。その2つが同時期に重要文化財になったことに、何か不思議な物を感じます。
と ころで僕は勿論国宝とか重要文化財、地方自治体の各文化財は大事にして行かなくてはいけないと考えています。元々日本人は古くからの事物を大事に扱ってき ています。それらを僕等の世代で壊してはいけないと思いますし、後世に残していかなければならないとも考えています。でもそれらは「何々文化財」という冠 が付いているから残すべきだとの考えではないと思います。多くの人は両親、祖父母から託された事物とか思い出の品物は大事にしていく気持ちを持っていま す。その気持ちの延長線上にある気持ちが、これらの事物を大事に取り扱う気持ちになっていくのだと思っているからです。

家から小学校に向か う道の途中に小さなお地蔵様がいます。昔からそこにいらっしゃるので、街並みや風景が変わっても、その中にとけ込んで佇んでいます。首がない事から。地域 の人たちは「首なし地蔵」と少し物騒な名前を付けていますが、愛着をもって接していて、常にお供え物や生花は添えられています。どこの町にもあるごく普通 の風景だと思います。勿論そのお地蔵さんは「何々文化財」になっているわけではありません。でも地域の自然な気持ちから綺麗に残されています。そう言う物 だと僕は思います。

今回の重要文化財の指定を批判しているつもりは毛頭ありません、その逆です。ただ、「何々文化財」の冠が付こうが付くま いが、今回指定を受けた建物達は地域の方から愛されている事に間違いはないと信じております。勿論維持保存するためにはお金が必要で、人が生きていくため にやむを得ない形で取り壊す事もあるかもしれません。それはとても残念な事です。その中で、旧朝倉邸の様に指定を受ける事で、何らかの形で維持されていく 事ができそうで良かったと思っています。

余談ですけど、以前「満月 MR.MOONLIGHT」という映画がありました。時任委三郎と原田 知世主演の楽しい映画でした。今回津軽経由の連想で、この映画の事を思い出しました。確かあの映画で始めて僕は「シャクシャインの乱」の事を知ったのでし た。この映画の最後の方で、二人が弘前城からロープを使い脱出する場面があり(E.Tにそっくりでした)、とても素敵なシーンでした。

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