2004/10/03

ジュニア、その育て方

家には猫が2匹いる。2匹とも雄の雑種。最初の猫はジュニアといいミルクから育てたけど育て方に失敗してしまいもの凄く神経質な猫になってしまった。

ジュニアは白く黒の斑点が所々にあるとても綺麗な猫だ。仕草一つ一つにも醸し出す色気がある。僕はこのジュニアを育てる事ですっかり猫にはまってしまった。

どちらかというと最初ジュニアの育て方は、猫という事もあり放任主義だった。獣医さんのところで予防接種を受けた時に猫エイズの話を聞き、あまり表に出さな い事が良いと言われた。家にずーっといるとストレスがたまるようで、それを家の中で発散する事になり色々と問題を引き起こした。襖は何回か張り直したし、 障子はもう張り替えるのもあきらめたほど。物は壊すし、しかも木綿のTシャツは食べるし。

そこに登場したのがAさんだ。Aさんは母の知人で 猫の育て方に一家言持っている人だった。Aさんは小振りな顔立ちの割に大きな目を持っていて、ぎょろりと僕を見つめ、ゆっくりと力強く「猫は叩いて躾けな ければいけません」と話した。その何とも言えぬ迫力に僕は圧倒されすっかりその気になってしまった。なにせこちらは猫と一緒に生活するのが初めてなのだ。 右も左もわからない中で専門家から金言をいただいた気持ちになってしまった。

こうしてジュニアが1才頃からの約1年間がしつけ受難時代となる。ちょっとした事でジュニアは叩かれる事になる。そのうちにジュニアはこちらが近づくだけで自分の身を守ろうとするようになった。

Aさんから教えられた躾が誤りである事に気がついたのは、猫関連の様々なネットを読んでからであった。多くの人たちは言っていた。

「叩いたりする事は特に猫にとっては躾になりません」

それはそうだよな・・・人間だって叩くよりは誉めたほうがいいに決まってるし・・・猫だって同じだよな・・・

でもなんでAさんは僕にあんな事を言ったのだろう・・・Aさんと猫の関係は勿論わからないけど、そうやってAさんも教えられてきたと思う。でも考えてみれば Aさんの時代と今とでは随分と猫と人間の関係も変わっているのは事実だと思う。昔はネズミを捕る為の猫だったけど、今では誰も猫たちにそれを要求したりは しないし。

それからは叩く事はなくなったけど、その1年間の躾期間はジュニアにとって、神経質な猫になるには十分すぎる時間だったようだ。 さわろうとするだけで怒り出すし、抱かせてもくれなくなってしまった。まぁ年齢と共にジュニアも性格が円くなっていったので、今では短時間であれば抱く事 は出来るけど。

勿論ジュニアが神経質な猫になったのは、Aさんの一言だけが原因ではない。ジュニアが本来持っている性格もあるし、僕の接し方にも原因があったと思う。でもジュニアの生活環境を変えてしまったAさんのあの一言はやはり重たいと思うのだ。

そのAさんは今から5年くらい前に病気で亡くなった。今でもジュニアが怒る度にAさんのぎょろりとした目で僕に語った姿を懐かしく思い出す。そしてそのたびに何故Aさんはあんな事を言ったんだろうと苦笑するのだ。

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