2004/10/18

長寿の白い猫


以前レオが糖尿病だった頃、僕は週に何回も動物病院に通った。

その動物病院は昔「ナガイ動物病院」と看板に書いてあったので、子供の頃の僕は「ナガイ先生」という立派な医者がそこにいるのだろうと思っていた。「ナガイ先生」は立派な体格で立派な口ひげを持ち、そして円形脱毛症の犬や、不眠症の猫達を治してくれるのだ。僕はそんなイメージを持っていた。

レオをその病院に連れて行き始めた時、その病院の名前が「ナガイキ動物病院」に変わっていたのをしった。当然に出てきた先生は「ナガイ先生」ではなかった。

まだ学生然としたその先生はレオを、不安な顔つきで診てくれていた。僕はその先生の顔つきをみて、さらにレオの事が心配になった。

その病院には、当たり前だけど待合室という物があって、広さ3畳くらいの大きさに長椅子が一つと丸い椅子が2個置いてあった。ある時、僕がレオを連れてその待合室で待っていたら、病室から女性の声で先生に哀願する声が聞こえてきた。どうも彼女が連れてきた猫は老衰で弱っていたらしく、何とか元気にしてくださ いと先生に頼んでいる感じだった。

彼女も先生の不安げな顔つきにますます不安になっていったのでは?と僕は待合室で二人の会話を聞いていた。

先生は彼女に、**ちゃんは既に18才ですから、人間で言えば本当に凄い歳なんですよ、と言って栄養剤かなにかを投与してくれたみたいだった。診察が終わり、待合室に現れた**ちゃんは、それでもやっぱりぐったりしていた。

**ちゃんの同居人である彼女は、僕に会釈をすると同時にレオの事をみて「おいくつですか」と聞いてきたので「3才くらいです」と曖昧に返事をした。僕の返事を聞いているのかいないのかわからなかったけど、彼女は間髪をおかずに**ちゃんの年齢の事を話し、もう寿命なんですと寂しそうに笑った。でも僕は猫の歳 は外見からは全くわからなかった。**ちゃんは真っ白な長毛の猫で、レオに較べると由緒正しい王女様という感じの綺麗な猫だった。僕がその事を彼女に告げ ると、かすかに**ちゃんが「にゃ」とないた様な気がした。

それからも頻繁に動物病院には行ったけど、**ちゃんとはそれから一回も合わなかった。

イラストは「アルテミス巨猫ファンタジー」さんから使わせて頂きました

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