2004/11/06

忘れられない詩


以前「現代教養文庫」という文庫があった。名前は凄いけど、結構面白い品揃えで、生来すこしずれていた僕としては気に入っていた文庫だった。残念な ことに平成14年に倒産した。でも教養文庫を復刊して欲しいと望む声って結構あるんじゃないかな?少なくとも僕はその一人だ。再度手に入れたい一冊の本が 「現代教養文庫」の中にあるので特にそう思う。

その一冊のタイトルは忘れてしまった。内容は「夭逝」した若い詩人達の解説と詩を集めた本だった。その中で特に気になっている詩人は二人いる。勿論、名前も忘れてしまっているけど・・・

一人は自由が丘学園の生徒で感性豊かな、書いた詩の内容も覚えていないのだけど、感性豊かな詩であった印象をもって覚えていた。

もう一人は、詩の断片だけ覚えている。住所が羅列している詩だった。その羅列の狭間に時折手紙の言葉が挿入されている。手紙の内容の片方は女性で在日韓国人。もう片方は日本人男性。その男の方から女性に出す手紙と返事のやりとりの詩なのだ。

手紙のやりとりは、男性の内容は書かれていなくて、住所だけ書いてある。女性からの返事は、短いけど限りなく優しい。手紙は時折宛名不明での返送があり、また宛先の住所も頻繁に変わる。月日も一緒に記載されているので、その間隔が短く住所が変わっていくのがわかる。そして手紙は届くことが無くなる。

僕が書くと詩のイメージが逆に損なわれると思う。また、長い詩のような印象を持たれるかもしれない。でもいまだに心に残る良い詩だった。

そ の男女の関係が何だったのかはわからないけど、男はいつも彼女のことを気にして心配し、女は優しくそれに応えていた。お互いにとって、とても大事な人間関 係の様に思えた。 住所と住所の空白はその女性のつらい生活が想像できる。そして度重なる転居は何かから逃げるようだった。そして消える・・・・

詩人が何をこの詩に残したかったのかはわからないけど、今となっては名前も知らない、しかも廃刊になった文庫の(そのうえ人気も無かった本)中に載っていた詩が、僕は忘れることの出来ない。

追記:現在以下のサイトで何冊かの現代教養文庫を電子本として購入することが出来る。「妖精の誕生 フェアリー神話学」「海の奇談」などを購入することが出来る。また、NTTドコモのPCサイト本屋「M-stage book」では「現代教養文庫」を電子化して復刻を計画しているらしい。


M-stage book
電子書店パピレス

画像は今年バイクで行った上高地の写真です。これも忘れられない風景。

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