2005/02/11

海の底

青空に一本の白い線。見ればそこに「ひこうき」が飛んでいた。
雲1つない青空だ。冬の空は薄く、昼過ぎとはいえ、少し灰色が入っている。
そこには、まるで海面を走るボートのような航跡。
一瞬不思議な感覚に囚われる。
そうなのだ、僕は海の底で貝のように、殻を少し開けて、隙間から海面を見上げる。そこには一本の航跡がある。
僕はさらに目を凝らして眺める。「ひこうき」と僕との距離が縮まる。
写真を撮ろう。そう思った。
でもそう言うときに限ってカメラがない。
日曜の公園は人が多く、家族連れの晴れやかな笑い声が響く。気が付けば見上げているのは僕だけのようだ。
「ひこうき」は既に遙かに過ぎ去っている。
突然に航跡に向かって祈りたい衝動に駆られる。それは一瞬夜空の流れ星と同じ感覚になったのかもしれない。
そんな自分の姿に、どこかの海の底で貝達が航跡をみて祈りを捧げている姿を想像し、少しだけ笑う。

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